物理療法とは?理学療法とも呼ばれる療法の種類と効果について

物理療法とは、物理的な力を利用して行われる医療行為のことで、現在は、電気や超音波を使った方法など、その種類は幅広く、また応用されています。物理療法は主にリハビリテーションに使われていて、理学療法と呼ばれることもあります。

物理療法とは

物理療法とは、物理的な刺激を生体に与える医療行為で、古代ギリシアの時代から使われてきました。現在は電気刺激療法や超音波療法、温熱療法など、さまざまな種類があります。物理療法は、理学療法とも呼ばれ、主にリハビリテーションの場面で、理学療法士の下で行われます。

物理療法は、理学療法の一部とされる場合もあり、その場合「運動療法」「物理療法」、そして「動作訓練」に大別されます。この記事では、さまざまな物理療法の種類と、その効果についてご紹介していきます。

物理療法の種類

ここからは物理療法の種類をご紹介しながら、その内容についても細かく見ていきます。

温熱療法

温熱療法は、熱エネルギーを生体に注入することにより治療を目指す医療行為です。温熱療法にも種類があり、科学的根拠のある治療法と、東洋医学(代替医療)があります。

・がんの治療

温熱療法でよく知られているのが、がんの治療です。ハイパーサーミアと呼ばれています。

・炎症治療

炎症は体内外からの刺激に対する生体反応で、それは人間の持つ免疫システムです。温熱療法による刺激は、その免疫システムにスイッチを入れる働きをします。

・血管系の治療

熱の刺激を血管に与えることにより、血管を広げ、血流の改善を狙う代替医療です。

・ツボ

「気」の出入り口だと考えられている「ツボ」。気がスムーズに通らないようになると体に不具合が発生すると考えられていますが、このツボを熱により刺激する代替医療があります。

寒冷療法

寒冷療法は、冷やすことで身体のなんらかの不具合を治療することを目的とした治療法で、低温療法と呼ぶこともあります。筋肉痛などの際に、多くの人がコールドスプレーや氷を使って痛みを感じる部分を冷やすことがありますが、それがまさしく寒冷療法です。冷たい刺激は、皮膚や筋の血流を増加させると共に、神経の閾値(いきち・しきいち)が上昇、それにより「感覚」が伝わる速度が鈍ります。寒冷療法は鎮痛のほか、筋肉の緊張と収縮、痙攣、筋の疲労回復などに効果があるとされています。寒冷過敏症、感覚麻痺などにこの寒冷療法を用いることは禁忌とされています。

水治療法(すいちりょうほう)

水治療法は、水を使用する物理療法です。古くから使われている療法の一つで、たとえ使用する水が冷たくても温かくても、「水」を使うのであれば水治療法になります。シャワーやスチームを使用したもの、そして温泉治療は、代表的な水治療法といえます。また、プールの中で行われる歩行訓練なども水治療法に含まれます。

光線療法

光線療法は、主に光を照射することにより、睡眠障害、季節性のうつ、新生児の黄疸、などを治療する療法を指します。自然光が用いられる場合もありますが、医療として行われる光線療法では、通常、人工の光を照射します。

気候療法

気候療法は、気候の違いが人に影響することを利用する物理療法です。人それぞれ、体質も好むものも違い、その昔は「療養地」などに赴いて疾病の治療などを行っていました。現在、気候療法の考え方として「刺激気候」と「保護気候」があり、高山や、逆に海の近くは刺激気候に分類され、アレルギー性疾患、リウマチ性疾患などの治療に向くとされています。保護気候では、循環器系の病気や肺結核等の治療が向くとされています。

極超短波療法

極超短波療法は、マイクロ波を使う施術療法で、止血やがん治療に用いられています。マイクロ波は電磁波の一つで、おなじみの電子レンジが、このマイクロ波を使っています。マイクロ波は、体の内部深くまで届くため、筋肉や腱といった場所の血行をよくすることでこりや痛みの原因となる物質が生み出されるのを抑制します。現在、マイクロ波治療器により行われている治療には、「むち打ちなどの痛み」「神経痛」などの緩和、新陳代謝の促進、局所における循環の改善、などがあります。

電気刺激療法

電気刺激療法は、患部の状態に適した電流を流して、回復を目指す物理療法です。麻痺や疼痛の治療に用いる「低周波療法」は、周波数1000ヘルツ以下の電流を体に通すことで行われます。そのほか、周波数1000ヘルツ以上のパルス波電流を使用する「中周波治療法」、2種類の異なる中周波を同時に使用する「干渉波療法」などがあります。通常、皮膚に電極を取り付けて治療を行います。

超音波療法

超音波療法は、血流などを増加させる温熱、もしくは非温熱効果を持つ物理療法です。疼痛を和らげることや、関節の可動部拡大などに利用されています。超音波療法では、主に1メガヘルツや3メガヘルツの周波数が使われています。超音波療法は、遠赤外線のような伝導加温ではなく、熱転換することで体内組織に作用するため、体内深くにある組織まで効率よくエネルギーを伝えることができるという特徴を持っています。

陰圧閉鎖療法

陰圧閉鎖療法は、慢性や難治性創傷や熱傷の治療などに用いられる物理療法で、減圧閉鎖創傷療法や局所陰圧療法などと呼ばれることもあります。世界では、1990年代に広く使われるようになり、「陰圧補助閉鎖治療システム(V.A.C.)」として知られていました。日本でも臨床現場においては、「湿潤療法」が取り入れられていましたが、実際に日本でV.A.Cが認可されたのは2009年のことでした。

高圧酸素療法

高圧酸素療法は、高い気圧を持つ環境において、患者に対し、高い濃度の酸素を吸入させ、病気からの回復を狙う物理療法です。高圧酸素療法は、一酸化炭素中毒や、急性のガス中毒の治療によく使われていますが、そのほかの疾患にも幅広く適用されていて、重症の熱傷や凍傷、急性心筋梗塞、脳梗塞、腸閉塞、突発性難聴などがその代表例です。

牽引療法

牽引療法は、患者が痛みを感じている部位をゆっくりと引っ張ることにより、神経への圧迫を減らしていく治療方法です。神経への圧迫が減ると、当然、痛みや不快感は和らぎますが、筋肉の血行を促進する効果もあるので、肩こりなど、そのほかの慢性的疾患が改善される可能性もあります。牽引療法は、主にリハビリの現場で、他の治療方法と組み合わせて行うことで、より効果のある治療につなげることが可能です。

運動療法

運動療法は、体の一部、もしくは全体を動かして、機能の回復や症状の緩和を図る物理療法です。日常生活活動訓練、関節活動域の回復、麻痺回復、筋力アップ、心肺機能の訓練、歩行訓練など、が主要な運動療法で、近年は高血圧や糖尿病などの生活習慣病対策にも効果的だと考えられています。

物理療法について・まとめ

理学療法(理療)とも呼ばれることのある物理療法(物療)は、リハビリテーションが医学として進歩することにより、内科領域では「物療」、整形外科領域では「理療」として用いられることが一般的になってきています。医療法においては、「理学診療科」という診療科名を使うことが認められていますが、この科で働く専門家が「理学療法士」や「作業療法士」という人たちです。物理療法は、ご紹介したように、リハビリテーションを中心に、さまざまな方法で、さまざまな疾病の治療に使用されています。